「元気な私」はメイクでつくる [かづきれいこインタビューコラム]

【第8回】 医療とメイクの連携を

私は、機会があるごとに「顔と心と体はつながっている」とお話ししてきました。外観の悩みは、この三つを切り離して考えていては解決できないのです。
もう20年近く前になりますが、このことを痛感させられる出来事がありました。

「ひとりと向き合う」ことの重さ

カルチャースクールで前の席にうつむいて座っていた20代前半の女性の顔には、激しい隆起と赤みがありました。10代で発病した難病のためだということでした。


彼女に私のサロンに来てもらい、当時の技術の限りを尽くしてメイクをしました。彼女は喜んでくれましたが、私にとって満足できる結果ではありませんでした。顔の色を均一にするのは比較的難しくないのですが、凹凸をカバーしてなめらかに見せることは、メイクでは限界があるため、私は知り合いの形成外科を紹介しました。

彼女は手術によってなめらかな肌になったものの、数か月もするとまた凹凸が出てきてしまいました。根源となる脳の病気が治らない限り、手術をしても同じことの繰り返しだということがわかったのです。彼女は落ち込み、しだいに精神状態が不安定になっていきました。

頻繁に電話がかかってくるようになり、心配した私はなるべく相談に乗るようにしていました。顔のせいでなかなか就職できないという彼女に、その当時青山にあった私のサロンでのアルバイトを勧めたこともありますが、人の多い電車で好奇な目で見られてしまうストレスから、朝は始発で、帰りは終電の日々。そうなると残念ながら続けるのは難しいことでした。

その後、手術を担当した形成外科医が知り合いの精神科医を紹介したと聞き、正直ホッとしました。心の専門家ならば何とかしてくれるに違いないと思ったのです。電話もかかってこなくなったので、少なくとも精神的には良い方へ向かっていると思っていました。

ところが1年ほどして、再び悲痛な声で電話が来るようになりました。「睡眠薬を処方してもらっているけれど眠れない」というのです。その後間もなく、彼女は自らの命を絶ってしまいました。

「リレー」ではなく、「チーム」として

この出来事は、私にとって本当にショックでした。自分のメイクの力が及ばなかったことに責任を感じたのはもちろんですが、もうひとつ、痛切な後悔がありました。それは、メイクと形成外科と精神科がばらばらに接してしまったことです。

彼女には結果的に、「顔」「体」「心」を担当する3人の専門家が関わったことになります。しかし、まるでリレーのように患者さんを受け渡すだけではだめなのです。三者が情報を共有しあい、一緒にひとりの患者さんと向き合わなくては意味がありません。

彼女を救えなかったことへの悲しみは、その後もずっと心にありました。医療との連携の第一歩が、今ようやく実現しつつあります。また、2000年には顔、体、心の専門家が共に学び合う「顔と心と体」研究会を発足しました。

医療現場で、患者さん一人ひとりと向き合っていらっしゃるナースの皆さんにも、ぜひメイクと医療との連携について、知っていただきたいと考えています。

「元気な私」はメイクでつくる

「かづきメイク」の実践テクニックをこちらでご紹介しています

かづきれいこ

かづきれいこ

リハビリメイクの第一人者、フェイシャルセラピスト

傷ややけど痕のカバーや、それに伴う精神のケアを行う「リハビリメイク」を実施する組織を作り、また、一般の方を対象にした「かづきメイク」を全国カルチャーやREIKO KAZKI各サロンにて、レッスンを教える講師の育成に力を注ぐ。学会誌にリハビリメイクに関する論文を発表し、メイクの価値を高めるための活動にも力を注いでいる。

この記事に対する感想をお聞かせ下さい

ページトップへ戻る